• 土谷守生

ああ、悲しきサービスマン






 勝利のインタビューを受ける選手に背を向けて大会会場を去るサービスマンたち。彼らがスポットライトを浴びることはない。しかし、そんな彼ら抜きにトップシーンは語れない。 まだ薄暗い早朝、誰もいないコースにワックスマンの姿がある。彼らはスタートからゴールまでポイントごとに丹念に雪温を測る。そのデータを持ち帰り、ワックスルームで最も滑走性能を発揮できる調合をしたワックスを作り出して塗る。天候が急変した場合に備え混合比率を変えたワックスを5~6台のスキーに塗っていく。担当する選手が成績を左右するだけにワックスマンが最も緊張する瞬間である。  ワックスが塗られたスキーは、ダウンヒルの場合コースが長いのでヘリコプターでスタート位置に運ばれ、ワックスを雪に馴染ませるため埋められる。雪質に合わせてエッジの微調整をする。そして選手がスタート地点に到着すると、その時点で最も雪質に合うと思われる1台をチョイスする。ワックスマンの職人的判断が最も要求される場面だ。  ウェアの裾のバタつきが気になる選手にはテープでブーツに固定する。選手は考えられるリスクはできるだけ避けたい。どんな要求にも選手の不安をなくすために即座に対応できないとサービスマンは務まらない。  ビンディングのサービスマンは、立ったまま調整できるように穴を掘って選手を待ち構える。選手がスキーをセットしてビンディングチェックに来ると誤作動を防ぐためブーツソールの雪を丁寧に落としてからステップインし、ビンディングを調整する。これを使用選手全員に行う。極寒の中、準備から終了まで2時間以上かかる作業を薄いグローブで黙々と行う。まさに過酷な作業だ。  そんな彼らは選手が活躍し、メーカーからのボーナスプライスを手にした時にはじめて報われる。そのために彼らはレースが終わると、荷物をまとめて選手より先に次の会場へ向かう。選手を表彰台に立たせるために。

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