• 土谷守生

ワールドカップ回転10位 廣井法代

 廣井法代と初めて会ったのは、1985年前後だったと記憶しているが福島県に近い新潟の奥只見丸山スキー場だった。3m、4mという豪雪地帯のこのスキー場は、オープンするのが他のスキー場がクローズする4月後半か5月の連休からだった。  その奥只見丸山スキー場で「奥只見大回転」という大会が行われ、廣井とはそこで出会った。小学5年生の女の子にしては大柄だったと思うが、滑りを見るととても子供とは思えない、安定したフォームでガンガン突っ込んでくる滑りに目を惹かれた。  廣井との出会いから7~8年後、ジャパンチームのリスト(ジュニアチーム)に名前を見つけたのが1992/1993シーズン、アルベールビルオリンピックが終わって新体制になった時だ。この時廣井は湯沢高校の1年生だった。翌シーズン、初の海外遠征のメンバーに抜擢され、フィンランドで行われたFISレースに参戦、大回転1本目途中棄権というのが海外で行われた初陣の結果だった。  順調にステップを刻む廣井は、高校を卒業した1995/96シーズンにシニアチームのCランキングに昇格、そのシーズンの11月18日、ノルウェーで行われたFISレースのスラロームで初の表彰台(3位)に立った。Bチームに昇格した翌シーズン、とうとうFISレースで優勝を飾るまでになっていた。このシーズン、はじめてワールドカップに出場したが、さすがに「世界の壁」は厚く、出場した3戦のうち2戦が1本目完走するも2本目進出できず、もう1戦は1本目コースアウトしてしまった。  しかし、年々確実に進歩を遂げている廣井は、長野オリンピックを1年後に控えた1996/97シーズン、世界選手権大会を目前に行われたワールドカップで初の2本目進出を果たした。2月2日、スイスのラークスで行われたスラロームで25位に入り、初のワールドカップポイントを獲得、世界へ向けて一歩前進した。  この直後に行われた世界選手権大会(セストリエール)はスラローム、大回転とも途中棄権、初の代表選手として選ばれた1998年長野オリンピックも2種目途中棄権に終わってしまった。  この悔しさをバネに発奮した廣井は、2001/02シーズン、現役選手として最高のシーズンを迎える。そしてこの年、ワールドカップの開幕から快進撃を続ける。12月20日、イタリアのセストリエールでのスラローム第3戦、初の20位以内となる17位に入り、勢いに乗った12月28日、日本アルペン女子にとって悲願でもある記録をマークした。  このレースの2本目、廣井は10双旗目で大きな失敗を冒した。が、直後に素晴らしい滑りを展開する。「1本目もそれほど良くなかったし、2本目、上で失敗したこともあってもうダメかなと思いました。ところが、失敗した後、滑走ラインがはっきり見えたんです。ゴールした後、自分でもびっくりしました」    終わって見れば、2本目、優勝したラップのヤニッツァ・コステリッチ(CRO)、セカンドラップのソニア・ネフ(SUI)に次ぐサードラップをマークして1本目から大きくジャンプアップ、日本女子史上最高ランクとなる、10位に入った。ラップとのタイム差も、これまで最高となる2秒31差だった。 「2本目に出ることができたら何が何でも上位に行きたい。いつでもそう思って戦ってきました」。負けず嫌いの廣井が最も輝いた瞬間だった。 10位、サードラップとも今も破られていない記録だが、この後も廣井の快進撃は止まらない。年が明けてオフテルシュバング(GER)16位、ガルミッシュパルテンキルヘン(GER)12位、オーレ(SWE)14位とシーズン5戦で2本目進出を果たし、そのうち3戦で15位以内をマークした。  廣井は引退した2005/06シーズンまで、22回も30位以内に入っている。実は、記録を調べるまで、こんなに成績を残していたことを気づかなかった。筆者も資料としてワールドカップは10位までの順位とラップとのタイム差しか残していなかったので、この記事を書くにあたり、10位以外の記録があるかどうか15位以内、20位以内、30位以内と範囲を広げて調べてみると、15位以内が3回、20位以内が6回、そして30位以内が22回あり、これは日本の女子技術系史上で最も成績を残した選手であることに改めて驚いた。 女子のアルペン選手にとって10位という順位がいかに凄い記録か、世界的な選手を相手に3番目のタイムがどれほどのものか、22回も30位以内に入ることがいかに凄いことなのか、一般のメディアにアルペン競技や過去の記録に興味がある人がいたなら、彼女の存在はもう少し知られていたと思う。

 SAJの広報時代、アルペン競技の凄さ、素晴らしさを連日のように記者クラブに顔を出して新聞各社やテレビ各局に伝えたのに……。それが残念でならない。




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